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【相続税】賃貸物件に空室がある場合の貸家・貸家建付地評価|「一時的な空室」とは?

相続税

賃貸マンションやアパートを相続した場合、相続開始日(被相続人が亡くなった日)に空室があることがあります。
入居者が退去した後、次の入居者が決まるまでの間に、たまたま相続が発生することもあります。

このような空室については、一定の場合には、相続税の計算上も「賃貸されているもの」として、貸家や貸家建付地の評価をすることができます。

財産評価基本通達26(注)2では、継続的に賃貸されていた各独立部分について、課税時期に一時的に賃貸されていなかったと認められる場合には、その部分も「賃貸されている各独立部分」に含めることとして差し支えないとされています。
※ここでいう「課税時期」は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)をいいます。

では、どの程度の空室であれば「一時的」といえるのでしょうか。

この通達26(注)2の「一時的」の解釈が争われた事件について、令和8年1月15日、東京地方裁判所の判決がありました。
この判決では、相続開始日に空室となっていた部分について、「一時的に賃貸されていなかったもの」には該当しないと判断されています。

入居状況による相続税評価の違い

賃貸している建物には借家人の権利があるため、所有者であっても自由に使用・処分できるわけではありません。
そのため、相続税の財産評価では、自分で使用している建物や土地と比べて、貸家や貸家建付地には一定の評価減が認められています。

評価の考え方を簡単に比較すると、次のようになります。

利用状況 建物の評価 土地の評価
自分で使用している 固定資産税評価額 自用地として評価
全部を賃貸している 貸家として評価 貸家建付地として評価
一部が空室 賃貸割合を反映して評価 賃貸割合を反映して評価

例えば、10室ある賃貸マンションのうち、相続開始日に8室が賃貸中で2室が空室であれば、原則として、その空室部分は賃貸割合に含まれません。
そのため、10室すべてが賃貸中の場合と比べると、貸家・貸家建付地としての評価減は小さくなります。

しかし、その空室が一時的なものと認められる場合には、賃貸されているものとして賃貸割合に含めることができ、相続税評価額は下がります。

貸家建付地の空室|「一時的な空室」として賃貸割合に含められる場合

継続的に賃貸されてきた部屋が、相続開始日に「一時的な空室」と認められる場合について、国税庁のタックスアンサー「No.4614 貸家建付地の評価」では、次のような事実関係が示されています。

・相続開始前から継続的に賃貸されていたこと
・退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室期間中、他の用途に使用されていないこと
・空室期間が、相続開始日の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
・相続開始後の賃貸が一時的なものではないこと

したがって、「相続開始日に空室だった=必ず賃貸割合に含められない」わけではありません。

最短3か月24日に及ぶ空室は『一時的』とは認められず

今回の裁判では、相続した賃貸マンションについて、相続開始日に空室となっていた部分を賃貸割合に含めることができるかが争われました。

相続人側は、建物全体が賃貸専用物件であり、空室が生じれば収益性は低下するため、むしろ建物全体の価値を下げる要素であるなどと主張しました。

これに対し東京地裁は、一時的な空室と認められるためには、
「引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し、現に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど、課税時期前後の賃貸状況等に照らし実質的にみて課税時期に賃貸されていたのと同視し得ること」
が必要であるとしました。

今回の空室は、最も短いものでも3か月24日に及んでいました。

また、仮に継続的に入居者を募集していたとしても、相続開始日に特定の入居希望者と契約締結に向けた交渉をしていたなどの事情はなく、具体的な賃貸の見込みがありながら、合理的な理由によって契約締結まで時間を要したという事情も認められませんでした。

そのため、これらの空室は「一時的な空室」には該当しないと判断されています。

この判決からは、単に入居者の募集を続けているという事実だけで、一時的な空室と認められるわけではないことが分かります。

 

相続税申告では、入居状況の確認が大切

賃貸不動産の相続税申告では、相続開始日現在の入居状況を確認します。

空室がある場合には、各部屋について、前の入居者の退去日、募集開始日、募集状況、次の入居者の申込日・契約日・入居日など、相続開始日前後の状況を確認することが大切です。

特に、相続開始日の少し前に退去している部屋については、「空室だから賃貸割合から除外する」とも、「募集しているから賃貸中としてよい」とも一概にはいえません。

相続開始日前後の賃貸状況や募集・契約の経緯を確認し、一時的な空室に該当するかを一室ごとに判断する必要があります。

FAQ

相続開始日に空室なら、貸家・貸家建付地の評価減は受けられませんか?

必ずしもそうではありません。一時的な空室と認められる場合には、賃貸されているものとして賃貸割合に含めることができます。

空室期間が1か月を超えると、一時的な空室にはなりませんか?

1か月は国税庁が例示している判断要素の一つであり、一律の期限ではありません。
相続開始日にすでに空室であった場合には、状況などを総合的に確認して、一時的な空室に該当するかを判断します。

相続開始日には賃貸中で、その後に空室になった場合はどうなりますか?

相続税の財産評価は、原則として相続開始日現在の状況により行います。
相続開始日に賃貸借契約が存続し、賃貸されていた部屋が、その後に退去により空室となった場合には、その後空室が続いたという理由だけで、相続開始日現在の貸家・貸家建付地としての評価が変わるものではありません。

相続税申告では、このように財産ごとの状況を一つずつ確認しながら評価を行います。
相続税申告のご依頼・ご相談については、こちらをご覧ください。

■免責
※個別の財産評価は、物件の状況や賃貸状況等によって異なります。本記事は一般的な取扱いをご紹介するものであり、個別の税務判断を行うものではありません。

本コラム内の記事は全て投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令等に基づき記載しています。
 また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。
本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談し、十分に内容を検討したうえで実行してください。
 本情報の利用により損害が発生することがあっても、筆者及び当事務所は一切責任を負いかねますのでご了承ください。

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